① 3回褒める(最低限のライン) 学校の教室など、たくさんの子どもがいる環境で行われた大規模な研究では、先生が「叱る回数」よりも「褒める回数」を増やすほど、子どもたちの授業中の集中力が上がることが分かりました。教育現場では昔から「3〜4回褒める」ことが推奨されており、これは集団をまとめるための現実的かつ最低限の防衛ラインと言えます。
② 5回褒める(親子関係の黄金比) 家族療法や臨床心理学の世界では、「5対1」が関係を良好に保つための黄金比(マジック・レシオ)と呼ばれています。これは心理学者のジョン・ゴットマン氏の研究から導き出されたもので、1回のネガティブなやり取りをカバーして信頼関係を維持するには、5回のポジティブな関わり(褒める、感謝する、共感するなど)が必要だというものです。子どもの問題行動を改善する「親子相互交流療法(PCIT)」という科学的根拠のあるプログラムでも、親はこの「5対1」の比率を目標として指導を受けます。
③ 9回褒める(ハイリスクな子どもへの対応) 発達に特性がある子や、過去に強いストレス(虐待や不適切な養育など)を経験した子どもは、脳の報酬系(ドーパミンを受け取る働き)が鈍くなっていることがあります。このような子どもたちを対象とした研究では、一般的な子どもと同じような集中力や行動改善を引き出すためには、「約9回」という非常に多い回数の称賛が必要であることが分かっています。叱責は彼らの脳に強いダメージを与えやすいため、意識的にポジティブな言葉のシャワーを浴びせることが求められます。
Baumeister, R. F., et al. (2001). “Bad Is Stronger Than Good.” Review of General Psychology.
Gottman, J. M., & Levenson, R. W. (1992). “Marital Processes Predictive of Later Dissolution” (5対1のマジック・レシオに関する研究).
Caldarella, P., et al. (2020). “Effects of teachers’ praise-to-reprimand ratios on elementary students’ on-task behaviour.” Educational Psychology.
Caldarella, P., et al. (2021). “Effects of Middle School Teachers’ Praise-to-Reprimand Ratios on Students’ Classroom Behavior.”.
Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). “Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance.” Journal of Personality and Social Psychology.