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【専門医が解説】子育ての悩み解決!「1つ叱るなら〇回褒める」が正解?脳科学・心理学が教える黄金比

こんにちは、Dr.流星です。

子育て中、「ついガミガミ叱ってしまう」「どのくらい褒めたらいいの?」と悩むことはありませんか? 昔から「子どもに1つ注意するなら、3つ褒めろ」と言われたりします。しかし、医学や科学の研究が進んだ現在、この比率は本当に正しいのでしょうか?

結論から言うと、最新の心理学や脳科学のエビデンスが導き出した答えは以下の通りです。

  1. 「1回の注意につき3回褒める」は最低限のライン
  2. 家庭では「5回褒める」ことを基本の黄金比に
  3. ハイリスクな子どもには「9回褒める」くらいの丁寧な対応を

この記事では、なぜこれほどまでに「褒める」ことが必要なのか、そして効果的な褒め方のコツについて、分かりやすく解説します。

1. なぜ「1回の注意」に「複数回の称賛」が必要なの?

私たちの脳には「ネガティビティ・バイアス」という、ネガティブな情報をポジティブな情報よりも強く記憶に残す働きがあります。これは、人類が危険から身を守り生き残るために身につけた本能です。

研究によると、批判や叱責などのネガティブな出来事は、褒められるなどのポジティブな出来事の約3〜5倍もの心理的ダメージを与えるとされています。つまり、「1回叱る(マイナス)」のダメージをリセットしてプラスに持っていくには、少なくとも「3〜5回褒める(プラス)」という圧倒的な量が必要なのです

2. 脳科学から見た「褒める」と「叱る」の効果

子どもが褒められると、脳内では「ドーパミン」という神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは「やる気」や「集中力」を引き出す魔法の薬のようなもので、子どもは「次も頑張ろう!」と自発的に行動するようになります。他者から褒められることは、脳にとってお金をもらうのと同じくらい嬉しい「報酬」だと分かっています

一方で、感情的に激しく叱り続けると、子どもの脳には大きなストレスがかかります。小児精神科医である友田明美氏らの研究によれば、日常的な暴言や激しい叱責は、子どもの脳(言葉を理解する聴覚野や、感情をコントロールする前頭前野など)を物理的に萎縮させたり、変形させてしまうリスクがあることが実証されています。叱ることは、私たちが想像する以上に子どもの脳にダメージを与えてしまう行為なのです。

3. 科学が教える「ベストな褒める回数」

では、具体的に何回褒めれば良いのでしょうか?状況に応じた3つの基準をご紹介します。

① 3回褒める(最低限のライン) 学校の教室など、たくさんの子どもがいる環境で行われた大規模な研究では、先生が「叱る回数」よりも「褒める回数」を増やすほど、子どもたちの授業中の集中力が上がることが分かりました。教育現場では昔から「3〜4回褒める」ことが推奨されており、これは集団をまとめるための現実的かつ最低限の防衛ラインと言えます

② 5回褒める(親子関係の黄金比) 家族療法や臨床心理学の世界では、「5対1」が関係を良好に保つための黄金比(マジック・レシオ)と呼ばれています。これは心理学者のジョン・ゴットマン氏の研究から導き出されたもので、1回のネガティブなやり取りをカバーして信頼関係を維持するには、5回のポジティブな関わり(褒める、感謝する、共感するなど)が必要だというものです。子どもの問題行動を改善する「親子相互交流療法(PCIT)」という科学的根拠のあるプログラムでも、親はこの「5対1」の比率を目標として指導を受けます

③ 9回褒める(ハイリスクな子どもへの対応) 発達に特性がある子や、過去に強いストレス(虐待や不適切な養育など)を経験した子どもは、脳の報酬系(ドーパミンを受け取る働き)が鈍くなっていることがあります。このような子どもたちを対象とした研究では、一般的な子どもと同じような集中力や行動改善を引き出すためには、「約9回」という非常に多い回数の称賛が必要であることが分かっています。叱責は彼らの脳に強いダメージを与えやすいため、意識的にポジティブな言葉のシャワーを浴びせることが求められます。

4. 回数以上に大切な「褒め方のコツ」

ただやみくもに「すごいね!」「えらいね!」と褒めるだけでは、実はあまり効果がありません。子どもの成長を促すための2つのポイントをお伝えします。

  • 具体的に褒める(標的称賛) 「えらいね」ではなく、「おもちゃを貸してあげられて優しいね」「静かに座って待ててすごいね」と、どの行動が良かったのかを具体的に言葉にして伝えましょう。これにより、子どもは何をすればいいのかを正確に学ぶことができます。これは子どもの行動を適正化するうえでも重要な役割を担っているため、日ごろから心がけておくと子どもの行動がいい方向へ向かいやすくなります。
  • 才能ではなく「努力」や「過程」を褒める 「頭がいいね」「天才だね」といった能力を褒められると、子どもは「失敗したら頭が悪いと思われる」と恐れ、難しいことに挑戦しなくなってしまいます。逆に、「諦めずに最後まで頑張ったね」「途中でいい工夫をしたね」とプロセスや努力を褒められた子どもは、失敗を恐れず困難に立ち向かう心(レジリエンス)が育つことが研究で明らかになっています。

おわりに

子育てにおいて、注意や叱ることをゼロにするのは不可能です。しかし、「1回注意してしまったら、そのあとに5回ポジティブな声かけをしよう」と意識するだけで、親子の信頼関係は深まり、子どもの脳は健やかに育ちます。

実際、私自身は子どもに対して「3~5回褒めてから注意点を1つ述べる」ことを心がけています。例えば、ハサミの練習をしている子どもの横で見守りながら「丸も上手に切れてるね。すごい!」「今のところ難しかったけど、上手に紙を回せたね」「え!ジグザグも切れるの!?すごいね!」など褒めまくりながら、最後に「あとはここの部分がもっとゆっくり丁寧にできてたら完璧だったんじゃない?」など注意しつつも、内容が否定的にならないよう配慮しています。

もちろん、緊急で叱る必要があるときは違いますが、まずは今日から、お子さんの小さな「できた!」を見つけて、具体的に褒めることから始めてみませんか?

参考文献・情報源

Baumeister, R. F., et al. (2001). “Bad Is Stronger Than Good.” Review of General Psychology.

Gottman, J. M., & Levenson, R. W. (1992). “Marital Processes Predictive of Later Dissolution” (5対1のマジック・レシオに関する研究).

Caldarella, P., et al. (2020). “Effects of teachers’ praise-to-reprimand ratios on elementary students’ on-task behaviour.” Educational Psychology.

Caldarella, P., et al. (2021). “Effects of Middle School Teachers’ Praise-to-Reprimand Ratios on Students’ Classroom Behavior.”.

Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). “Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance.” Journal of Personality and Social Psychology.

友田明美 ほか (2009, 2011). マルトリートメント(暴言や激しい体罰)が子どもの脳発達に与える影響に関する一連のMRI研究.

Takiguchi, S., et al. (2015). 愛着障害を持つ子どもの報酬系(ドーパミン)機能不全に関する研究.

PCIT International. Parent-Child Interaction Therapy (親子相互交流療法) の基本原則とPRIDEスキル.

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この記事を書いた人

Dr.流星 – 精神神経学会専門医。精神保健指定医。
現役の精神科医であり、父親として日々子育てに奮闘中。
日々子育てに関連のある医学論文を読み、「科学的根拠に基づいた育児」をテーマに、子どもの心と脳の発達、メンタルケアについて情報を発信しています。現役パパだからわかる子どもの発達に関するリアルな悩みに寄り添いながら、家庭で実践できるヒントも紹介。ガジェット好きでもあり、育児に役立つ家電や子育てグッズを色々と試しています。子育ての悩みを軽減し、家族のメンタルヘルスを良好に保つ…そんな子育てに役立つ知識をお届けしていきます。

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