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子どもの片づけ・自己管理能力を育む

こんにちは、Dr.流星です。

「うちの子は全然片づけができない」「決まった時間に歯磨きをしてくれない」といった悩みを抱えているご家庭も多いのではないでしょうか。

片付けや整理整頓は、生活習慣の一部であり、将来的な学業・社会生活の基礎になります。文部科学省の指導要領でも「道具や用具の準備・片付け・整理整頓ができる」ことが学習目標に掲げられており、早い段階から身につける意義が強調されています。また研究では、幼児期から家事・片付けを手伝うことで自尊感情や責任感が高まり、学業成績や友人関係、生活満足度の向上にもつながると報告されています。

以下では、整理整頓スキルの向上自己管理能力の育成家庭内での役割理解という3つのテーマごとに、年齢別(3~6歳、6~12歳、13~18歳、大学生)に解説していきます。

目次

3~6歳(幼児期)

この時期は「遊び」の中で片づけを学びます。具体的に誘導し、楽しみながら体験させるのが有効です。例えば、「うさぎさんは赤い箱に入れる?青い箱に入れる?」「ママ(パパ)のお片付けとどっちが上手にできるかな?」とゲームや競争感覚で片づけするといいでしょう。また、「まずは絵本を片づけようか」「このゴミはゴミ箱に捨ててくれる?」と一度に一つの物(種類)だけを指定して片付けさせます。子どもの処理に時間がかかるので、声掛けの後に数秒待ち、優しく繰り返すのもコツです。お片付けを歌やゲームにする、カラフルな収納ボックスを用意するなど、楽しさを添える工夫も効果的です。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)も「郵便物を取る、ペットに餌をやる、テーブルを拭く」といった簡単な家事を手伝わせることで自立心が育まれると推奨しています。親が率先して片づける姿を見せることも大切で、親が上手に片づけしているところを見ることで模倣によりコツを覚えます。

6~12歳(小学生期)

身の回りを自分で管理し始める時期です。具体的な手順表やチェックリストでタスクを可視化すると、片付けがスムーズになります。例えば、次の日の準備には「教科書・ノート」「体操服」「筆箱」……といったリストを作り、壁や机に貼っておき、一緒に声に出して確認してみます。定期的なルーティンを作り、夕食前におもちゃを片付ける、歯磨きの前に明日の準備をするなど習慣化するとよいでしょう。また、小学生でもスタンプやシール、ポイント制でのお小遣いなどの報酬システムを導入し、達成感を味わわせるのも有効です。研究では、小学校入学前から決まった家事を行っていた子は、成績や生活満足度が高い傾向が認められています。親が具体的に誘導しつつ、「今はママが手伝うけど、自分でできるようになってくれたら嬉しいな」「自分でできるなんてお兄ちゃんになったね」と自立への期待や努力への称賛を伝えることで整理整頓スキルが徐々に向上します。

13~18歳(中高生期)

思春期になると自立心が強くなる反面、片付けは後回しになりがちです。ここでは「意味付け」を重視します。例えば、「自分の部屋が整っていると勉強に集中しやすいよ」と論理的に説明し、整理整頓の価値を理解させることが大切です。しかし、「そんなの分かってるし。うるせー」「好きにさせてよ」と反発するのが思春期です。そこで、家族全体を巻き込んで家族での片付け時間を設定する(両親も自分たちの部屋を整理整頓する、兄弟にも同時に片づけをさせる)、部屋のレイアウトを自分で考えさせるなど、親も手本を示しながら自律性を尊重したアプローチが効果的です。また、「特別なアイテム」が部屋にあるとそれを大切に使うために掃除をするようになることもあります。例えば、欲しがっていたパソコンや家具を中心に部屋作りをすると、それを大切にしようと他の物を積極的に片付けるようになります。片づけだけでなく、家事参加には責任や協力の意識が伴うため、自尊心や公平感、協調性の育成にもつながります。研究によれば、年齢に応じた家事参加はワーキングメモリや自己制御力の向上にも関連しており、片付け習慣は生活技能と認知機能の発達を支えます。つまり、作業効率が高く、感情のコントロールができる人間に育ちやすくなります。

大学生(18歳以上)

大学生は生活も学業も自己管理が必要な時期です。家事能力は社会での自立に直結するため、先に身につけておくと安心です。具体的には、実家で簡単な家事を担当させる、あるいは家族と分担して家事を行うことで自身の仕事を完遂する責任を果たさせます。もちろん料理のレシピや掃除のコツなどは親が関われるうちから教えておきます。研究では、子ども時代から定期的に家事を行っていた人ほど、成人後に自己管理能力や生活満足度が高いと報告されています。これは社会生活を送り始めてからではなかなか身に付かないことなので、長い年月をかけて習慣化しておくことが理想です。大学生自身が金銭管理や時間管理と並行して部屋を清潔に保つ経験を積むことで、社会生活能力の基礎が自然と育ちます。しかし、注意しておくべきなのは、18歳以上になっても一向に自分で片づけができない場合、大人の発達障害やその他精神疾患が関わっている可能性があるということです。他の特性と併せて疑わしい際は専門の医療機関を受診することも検討してください。

ポイントまとめ①: 整理整頓スキルの向上

3~6歳(幼児期)

  • 遊び感覚で片づけを学ぶ。
  • 簡単な家事で自立心を育む。
  • 親の模倣を通じて片付けの習慣を形成。

6~12歳(小学生期)

  • 手順表やチェックリストでタスクを可視化して習慣化する。
  • スタンプやシール、ポイント制で報酬を与え、達成感を強化。
  • 自立への期待や努力への称賛をしっかり伝える。

13~18歳(中高生期)

  • 整理整頓の意味付けを論理的に強調。しかし、反発もある。
  • 自分で考えさせる、親が手本を示すことを忘れずに。
  • 特別なアイテムを部屋に取り入れ、大切に扱う習慣を育てる。
  • 家事参加を通じて責任感や協調性を育む。

大学生(18歳以上)

  • 社会での自立を目指した自己管理力の向上。
  • 料理や掃除の基本スキルを家庭で身につける。
  • 金銭管理や時間管理と並行して片づけの習慣を定着。
  • 大人になっても片づけが苦手な場合、専門的な評価が必要な場合も。

3~6歳(幼児期)

この時期はまだ自分で決める能力が未熟なので、大人が生活リズムを整えるサポートをします。例えば、「寝る前は歯を磨いて、歯ブラシを決まった場所に戻す」「おやつの前にはおもちゃを箱に戻す」など、毎日のルーチンを繰り返し伝えることで習慣化していきます。この頃は1回で覚えられないのは当たり前なので、何度も根気強く伝えていく必要があります。なかなか覚えられなくても、習慣にならなくても「なんでできないの!」「何回も言ってるよね!」などと決して責めたり怒ったりしてはいけません。時間も毎日のタイムスケジュール(曜日ごとなど。厳格なものではなく、おおよその時間で)を決めて、子どもが時間を自己管理できるよう援助します。このとき、「もうすぐご飯だからそろそろ片づけを始めようか」「この絵本を読んだら歯磨きに行こうか」「明日はママとパパと公園に行こうか」など次の予定や明日の予定を予告しておくと子どもは”言われたからやる”よりも”自分で考えて動く”ことができるようになります。そのうち、「ねんねする前に絵本読んでくれる?」「片づけが終わったらおやつ食べていい?」「パパ、お外から帰ったら手洗いだよ!」と自分から言ってきたら習慣化されてきている証拠です。理解が進んできたら、家庭でもカレンダーや時計を使い、「あと3回夜に寝たらお出かけの日だね」「何時になったら片付けるよ」と予告することで時間感覚を育てます。この時期は成功したら小さなごほうび(シールや褒め言葉)を与え、ポジティブな体験にしましょう。そうした経験を通じて、「自分でできた」という達成感と自己効力感を養います。

6~12歳(小学生期)

小学生は学業と遊びの両立が必要になるため、計画力と自己管理が求められます。家の片付けも、ただやらせるのではなく、「いつまでに」「何を」「どのように」行うかを子ども自身が考える機会にします。チェックリスト(学校に持っていくもの、寝る前にすることなど)やタイムテーブル(宿題・掃除・片付けなどの時間割)を本人と一緒に作成し、活用するとよいでしょう。自分で考えたリストであれば子どもも守る意識が強くなります。習慣化してきたら内容を見直し、アップデートしていきます。また、学校でも学習時間や荷物管理など、自己管理について教えられているとは思いますが、家庭でも同様に「時間割や表を自分で見て行動する」練習を繰り返します。ルーチンと違う予定(遠足や家族旅行など)があるときには、思春期の子が手帳やアプリで予定を書き込むように、小学生には裏紙でよいので予定や必要なものを書き出させ、達成できたらチェックを入れて一緒に確認して捨てる、といったことを習慣化させると、自己管理能力が少しずつ身につきます。

13~18歳(中高生期)

この年代は思考力が発達し、自律的に行動できるようになります。部活動や塾などの習い事、高校生ではアルバイトなどで忙しくなる一方、睡眠不足やゲームの誘惑も増えるため、自己管理の難易度は上がります。まず大切なことは、本人が目標を設定し、「自分のことだから」と計画を立てられるよう促します。日頃のことは小学生期と同様に習慣化を図り、新しく計画を立てる必要があるときにはルールを明確にして親も自分で決めたことを守れているか確認しながら調整していきます。例えば、「試験前2週間は毎日塾や自習室に通い、家では23時までに寝る準備をして寝るだけにする」などルールを決めた上で具体的なスケジュールを作り、それを守れたら本人との振り返り後に報酬を与えるなどして自己評価を上げる仕組みを作ります。必要に応じてチェックリストや管理アプリを使い、まずは自分でやってみて、上手くいかなければ改善することを繰り返します。親は過度に手を貸さず見守りながら助けを求められたらフォローします。ADHD傾向などで自己管理が苦手な場合は、タスクを細分化(わかりやすく)して「まずこれだけは必ずする」と目標を限定し、一つ一つ成功体験を積ませることが有効です。

大学生(18歳以上)

大学生は完全に自己責任で生活する時期です。授業、試験勉強、アルバイト、サークル活動、就職活動と多忙になりがちなので、自己管理が学業成績や就職にも影響します。実家暮らしの場合は「自分で家計簿をつけて食費や娯楽費の管理をする」「毎週土曜日の午前中に自室の整理整頓を行う」など、小さな自律行動を習慣化させます。一人暮らしなら、掃除予定表や買い物リストを自分で作る、家計簿アプリでの金銭管理を始めるなど、家庭と同様の経験をしつつ、レベルアップが必要です。前述しましたが、研究では若い頃から家事の習慣があると成人後の健康管理や生活満足度が向上することが示されており、大学生のうちに日々の生活リズムを整えておくと、卒業後の社会生活への移行がスムーズになります。

ポイントまとめ②: 自己管理能力の育成

3~6歳(幼児期)

  • ルーチンを繰り返し伝える。
  • 予定を予告して自発的な行動を促す。
  • カレンダーや時計を使って時間感覚を育てる。
  • 小さな成功体験で自己効力感を育む。

6~12歳(小学生期)

  • チェックリストやタイムテーブルを作成し、自分で管理させる。
  • 自分で考えることで意識が高まる。
  • 遠足や家族旅行など特別な予定の場合もリスト化する。
  • 反復的な練習で自己管理能力を強化。

13~18歳(中高生期)

  • 自分で計画を立てる力を育む。
  • 成功体験を積ませて自己評価を高める。
  • タスクの細分化で達成感を積み重ねる。
  • フォローは最小限にとどめ、自律性を尊重。

大学生(18歳以上)

  • 実家暮らしでも自己責任での生活習慣形成。
  • 一人暮らしでの実践的な自己管理能力の育成。
  • 日々の生活リズムを整える重要性を強調。
  • 社会人基礎力としての片づけスキルを習得。

3~6歳(幼児期)

幼児は「家族の一員」として認められることが嬉しいため、役割を与えることが大切です。例えば、朝食の準備でお箸を並べる、食後に食卓を拭く、洗濯物を取り込むなどのちょっとしたお手伝いを導入します。簡単な役割でも「○○ちゃん(くん)も手伝ってくれてありがとう!」「前より上手にできるようになったね!」と声をかければ、子どもは自分の役割に誇りや成長を感じます。こうした経験は、社会性や共感性の発達にも寄与します。放課後児童クラブのガイドラインでも、協力や分担の必要性を子どもに理解させることが重要とされています。もちろん、最初から上手くできることは少ないので、親が「一緒にやろうか」と言って並行作業することで、お手本を示しつつ役割分担の感覚を身につけさせましょう。

6~12歳(小学生期)

小学生になると、家族の中で具体的な役割分担をした作業を担うことができます。子どもに合った家事を任せ、責任感を育みます。この時、能力以上のことを任せると「できなかった」と自信を失くしてしまうので、必ずできる範囲のことを任せます。「ご飯の前にお箸の準備をしてくれるかな」「今日のお風呂掃除をお願いしていいかな」など、あくまで自主性を重んじた声掛けを行い、自分から「いいよ!」「これもやろうか?」と行動できるよう促します。また、当日に突然「今日は皿洗いしてね」と言われても、子どもなりに「ゲームしようと思ってたのに」と不満を漏らすのは当たり前なので、家族での役割分担は当番表を作成したり、カレンダーに書き出すなどして日頃から明確にしておき、事前に決まっている形にすれば反発も少ないです。家族会議を開き、「次は誰がお風呂掃除担当?」と子どもの意見も聞きながら決めることで、役割への責任感と納得感が深まります。繰り返しにはなりますが、研究では幼少期から家事を習慣化した子は、共感や対人関係能力が高まり、向社会的に育つと報告されています。性別にとらわれず、男の子にも料理の手伝いや洗濯、女の子にもゴミ捨てや庭仕事など、様々な役割を経験させるとフェアネス(公平性)の感覚が養われます。これは現代では当然の感覚となりつつあり、「花嫁修業」などと言って女の子にばかり料理の練習をさせることはもう古い考え方になり、男性でも料理ができなければ社会人として恥ずかしい時代になっているのです(だいぶ前からですが)。

13~18歳(中高生期)

思春期には自立と反発が混在しますが、家事参加はバランスよく促します。年齢相応の役割として、例えば「週に1度は夕食づくりを担当する」「金曜日は登校時にゴミ出しを担当」など、具体的な当番制を設けます。米国の研究でも、家事を通じて自律心が育ち、家族への貢献感が高まるとされます。つまり、家族内での役割を与えることで、家族関係も良好に保つことができるのです。さらに、友人関係や部活で助け合う経験が増えるこの時期に家庭でも協力し合う体験を積ませれば、協調性や責任感がさらに強まります。親の関わり方としては、口出ししすぎず、手順に戸惑っても「さて、どうしたらいいかな?」としばらくは見守り、終わった後は「おー!最後までできたね!助かったよ」ときちんと感謝や称賛を伝えることがポイントです。間違っても「もういい。お母さん(お父さん)がやるから」「時間かかるし、邪魔だから手伝わなくていいよ」などと本人の自尊心を傷つけるような発言はしないようにしましょう。

大学生(18歳以上)

大学生は家庭から巣立つ準備段階です。実家生なら家族の食事作り(決められた金額内での買い出しを含めて)や掃除(コンロ周りやエアコンフィルターなども含めて)を定期的に担当させたり、家計管理の一部を分担させるのも一案です。一人暮らしなら、家事の順序や効率のいいやり方を親が教え、掃除についても日頃から綺麗に片付けておくべきところ、たまに掃除すればいいところなどを明確にしておくなどして、実生活を送りながら学べるよう下準備をしておきます。何度も述べていますが、研究によれば幼少期からの家事経験が多いほど、成人後の健康管理や対人関係スキルに良い影響があるとされ、大学生時代に培う役割意識は自己統制力や社会適応力の基盤になります。社会人になっても片付けられない人、家事ができない人、自己管理ができず時間にルーズな人と言われないためにも、やはり片づけや自己管理の能力は身に付けておくべきでしょう。将来を見据え、「社会人になってからも役に立つ、家族や仲間と協力して信頼されるための能力である」ことを伝えながら、役割分担の意義を確認させるとよいでしょう。

ポイントまとめ③: 家庭内での役割分担の理解

3~6歳(幼児期)

  • 家族の一員として役割を与える。
  • お手本を示しつつ一緒に作業。
  • できたことに対する感謝と称賛で自尊心を育む。

6~12歳(小学生期)

  • 自主性を尊重した家事参加。
  • 当番表やカレンダーで日頃の役割を明確に。
  • 性別にとらわれず幅広い家事経験を提供。

13~18歳(中高生期)

  • 明確な役割分担と責任感の育成。
  • 家族での協力体験を通じて協調性を育む。
  • 終わった後の感謝や称賛で達成感を高める。

大学生(18歳以上)

  • 社会での自立準備としての役割分担。
  • 実家での役割分担。一人暮らしでは下準備をして実生活の中で練習。
  • 社会生活能力の獲得につなげる。
参考文献・情報源
  • 文部科学省「学習指導要領解説」 URL: https://www.mext.go.jp
  • 厚生労働省「放課後児童クラブ運営指針」 URL: https://www.mhlw.go.jp
  • AACAP(American Academy of Child and Adolescent Psychiatry)「Chores and Children」 URL: https://www.aacap.org
  • Harvard Health Publishing「How to get your child to put away toys」 URL: https://www.health.harvard.edu
  • Early childhood household chores and long-term behavioral development.
  • Relationship between household responsibilities and adolescent self-regulation.
  • Family roles and child socio-emotional growth.
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この記事を書いた人

Dr.流星 – 現役の精神科医であり、父親として日々子育てに奮闘中。
「科学的根拠に基づいた育児」をテーマに、子どもの心と脳の発達、メンタルケアについて情報を発信しています。現役パパだからわかる子どもの発達に関するリアルな悩みに寄り添いながら、家庭で実践できるヒントも紹介。ガジェット好きでもあり、育児に役立つ家電や子育てグッズを色々と試しています。子育ての悩みを軽減し、家族のメンタルヘルスを良好に保つ…そんな子育てに役立つ知識をお届けしていきます。

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