こんにちは、Dr.流星です。
お子さんに「どうして夢を見るの?」と聞かれたら、少し答えに悩みますよね。夢は不思議な現象で、実は科学者にも完全には解明されていないのです。しかし、「夢にはどんな役割があるのか」についてはいくつか有力な説があります。難しい内容ですが、できるだけかみ砕いて説明してみます。
まず知っておきたいのは、人の睡眠には「浅い眠り(レム睡眠)」と「深い眠り(ノンレム睡眠)」という2つの状態があることです。(眼球運動についての説明は省略)
レム睡眠は体は休んでいますが脳が活発に働いている睡眠で、まさにこの時に私たちは夢を見ています。脳が起きている間に経験したことを整理したり記憶に焼き付けたりしていると考えられており、夢は「昼間に学んだことの復習」とも言われます。一方、ノンレム睡眠は脳もしっかり休む深い眠りで、身体の成長や疲労回復が行われます。
では、夢そのものの役割についてはどんな説があるのでしょうか。現在、有力視されているものをいくつか紹介します。
記憶を整理するため
夢を見ることは記憶の定着(覚えたことを脳に焼き付ける作業)に関係しているという説があります。例えば、勉強した知識や体験した出来事を、夢の中で整理して覚え直している、といったイメージです。実際に、しっかり眠った後の方がテストの成績が良くなるという研究結果もあり、夢は「脳の中で復習する役割」があるのかもしれません。
感情を整理するため
夢の中では楽しいことだけでなく怖いことや悲しいこともよく起こりますよね。これは、脳が感情を色々な場面でリハーサルしているという説です。例えば、現実では経験できないような危険な体験を夢で疑似体験することで、いざという時に対処できるよう練習しているという考え方です。夢が「心の予行練習の場」になっているのかもしれません。
頭の中の大掃除
私たちの脳には日中、本当にたくさんの情報が入ってきます。そのままだとゴチャゴチャなので、夢を見ている間に必要な情報と要らない情報を仕分けしているという説もあります。いわば夢は「脳のお掃除タイム」で、散らかった頭の中を整理整頓しているというイメージです。朝起きたとき「頭がスッキリした」と感じるのは、このおかげかもしれません。
ただの偶然(意味はない)
中には、「夢に深い意味はなく、たまたま脳が見せているものにすぎない」という見方もあります。この説では、夢は体が睡眠に入る時に脳内で起こる現象の“副産物”で、ストーリーには特に意味はないと考えます。確かに夢の内容は突拍子もないものも多く、人によって様々です。今のところ「夢の役割はこれ!」と断言できる決定的な証拠は見つかっていないのが現状であり、意味を見出さなくてもいい可能性もあります。
まとめ
このように夢についてはいろいろな説がありますが、共通して言えるのは「夢を見ること自体はごく自然で健康なこと」だという点です。大人でも子どもでも毎晩のように夢は見ており、内容を覚えているかどうかはともかく夢そのものは見て当たり前のものであり、深く考えすぎないことが肝要です。
しかし、小さいお子さんは特に怖い夢(悪夢)で夜中に起きてしまうこともあります。たまになら問題ありませんが、頻繁に悪夢を見る場合は日中の不安やストレスが影響している可能性もあります。怖い夢を見たときには「夢だから大丈夫だよ」「パパ(ママ)がいるから安心して」と安心できる声掛けとスキンシップ(抱きしめるなど)を心がけましょう。
日ごろから子どもが話す夢の内容に耳を傾け、楽しい夢でも怖い夢でも心を育む大切なコミュニケーションの時間にしたいですね。
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