MENU

【専門医が解説】子どもが片付けできないときはどうしたらいい?年齢別の声かけ・習慣化のコツ

こんにちは、Dr.流星です。

「何回言っても、おもちゃを片付けてくれない」

「歯磨きや明日の準備も、毎日親が言わないと動かない」

子育てをしていると、こんな悩みは珍しくありません。

つい「もう何回言ったと思ってるの!」「自分でできるでしょ!」と言いたくなることもありますが、子どもが片付けられないのは、必ずしも「やる気がない」「だらしない」からではありません。

特に幼児期~小学生頃は、何から始めるか考える、順番を覚えておく、遊びから気持ちを切り替えるといった力そのものが発達途中です。

この記事では、精神科医として発達や行動をみる視点を踏まえながら、

  • なぜ子どもは片付けが苦手なのか
  • 家庭で使いやすい声かけ
  • 年齢に応じた片付け・自己管理の教え方
  • 発達特性などについて相談を考えた方がよいケース

を解説します。

結論から言えば、目標は「いつも完璧に片付いている」ではありません。

「自分で生活を整える」方法を、少しずつ身につけていくことが大切です。

目次

「片付けて」は子どもには意外と難しい指示

大人にとっては簡単に思える「片付けて」という言葉。

実はこの一言の中には、

「何を片付けるか決める」
「どこに戻すか思い出す」
「今やっている遊びをやめる」
「順番に作業する」
「終わるまで注意を保つ」

など、いくつもの作業が含まれています。

幼い子どもに、

「おもちゃ片付けて、手を洗って、歯磨きして、パジャマに着替えてね」

と一度に言っても、途中で何をするのか分からなくなるのは不思議ではありません。

Harvard Healthでも、幼い子どもへの片付けでは、一度に複数の指示を出すのではなく「ブロックを箱に入れてね」のように一つずつ具体的に伝え、子どもが反応する時間を待つ方法が紹介されています。

「言うことを聞かない」と考える前に、指示そのものを子どもが実行しやすいサイズにすることがポイントです。

1.「片付けて」ではなく、一つの行動を伝える

幼児ほど、指示は具体的にします。

「片付けて」

ではなく、

「まずブロックを白い箱に入れよう」

「次は絵本を本棚に戻そう」

という具合です。

一つ終わってから次を伝えます。

わが家でもそうですが、子ども相手では「大人ならできるのに」は通用しません。大人側が工程を細かく指示してあげるだけで、意外と動けることがあります。

2.片付ける場所を子どもにも分かるようにする

子どもに片付けを求めるなら、環境も「子どもが片付けられる仕組み」にしておく必要があります。

例えば、

  • おもちゃの種類ごとに箱を分ける
  • 箱に写真やイラスト、シールを貼る
  • 子どもの手が届く高さで中身が見えやすい収納にする
  • 細かく分類しすぎない
  • おもちゃそのものを増やしすぎない

などです。

収納が複雑なのに「ちゃんと片付けなさい」と言われても、子どもには難しい場合があります。

子どもを訓練する前に環境を少し変えるという発想も大切です。

3.遊びから片付けへの切り替えを予告する

夢中で遊んでいるときに突然、

「はい、もうおしまいだよ。片付けて!」

と言われれば、大人でも切り替えられず、少し嫌な気持ちになるでしょう。

幼児には、

「もうすぐご飯だから、あと1回遊んだら終わりにできるかな?」

「この絵本を読み終わったら一緒に片付けようか」

「時計の長い針が6に来たらおしまいにしようね」

と事前に知らせておくと、次の行動への準備がしやすくなります。

カレンダーや時計が理解できるようになったら、

「あと3回寝たらお出かけだね」

「6時からは晩御飯の時間だよ」

など、少しずつ時間の見通しを持たせるのもよいでしょう。

「切り替えるまでの時間」には個人差があります。その子の切り替えまでにかかる時間を把握しておきましょう。

4.できた行動を具体的に褒める

「えらいね」でももちろん構いませんが、できれば、

「ブロック、全部箱に入れられたね!すごい!」

「自分でお人形のお片付けできたの!?お姉ちゃんになっててママ嬉しいよ!」

「荷物を運んでくれて、パパはすごく助かったよ~。ありがとう」

のように、何ができたのか、それによって周囲がどう感じたのかを具体的に伝えることがおすすめです。

American Academy of Child and Adolescent Psychiatry(AACAP)も、子どもの家事参加では、分かりやすい期待を伝えること、決まったルーティンを作ること、肯定的なフィードバックを行うことなどを勧めています。声かけも含めて習慣化したいですね

5.親が全部やるのではなく、一緒に練習する

「子どもの片付けを待っているより、大人がやってしまった方が速い」

それはそうです。これは間違いありません。

夕食前や朝の忙しい時間なら、なおさらです。

ただ、いつも大人が代わってしまうと、本人が練習する機会も減ってしまいます。

最初は、

「パパはこっちを片付けるから、○○は積み木のお片付けをお願いできるかな」

と一緒に作業して構いません。最初はおもちゃ一つでもいいくらいです。

子どもは大人の行動を見ながら方法を覚えていきます。

毎回完璧に一人でやらせる必要はありません。

手伝いながら、少しずつ親の手を減らしていくくらいで十分です。

「親の背中を見て育つ」と言いますが、いい行動ほど親が先に見せて、マネをさせていきましょう

3~6歳:遊びながら「片付ける経験」を積む

幼児期は「きれいな部屋を維持する」ことより、片付けという行動そのものを経験する時期です。

例えば、

「赤いブロックはどこかな?」

「パパとどっちが早く箱に入れられるかな?」

とゲームにするのも一案です。

CDCも、4歳頃には郵便物を持ってくる、ペットに餌をあげる、テーブルを拭くといった簡単な家事を手伝わせることを紹介しており、5歳の発達の目安として、靴下を組み合わせたり食後の食器を下げたりといった簡単な家事を挙げています。

ただし、年齢はあくまで目安です。

同じ5歳でも得意なこと・苦手なことにはかなり個人差があります。

できないことを責めるより、今できる仕事よりほんの少し難しい程度から始めるのがよいでしょう。

小学生:チェックリストとルーティンを活用する

小学生になると、

「毎日同じことを同じ順番でする」(習慣化)

という仕組みが使いやすくなります。

例えば寝る前なら、

□ 宿題をランドセルに入れる
□ 筆箱を確認して入れる
□ 明日の持ち物やプリントを確認する
□ 歯磨き
□ パジャマに着替える

というリストを本人と一緒に作ります。

ポイントは、親だけで決めないことです。

「何を書いておけば忘れないと思う?」

と本人にも考えてもらうと、少しずつ「自分を管理するための道具」として使えるようになります。

特別な予定でも同じです。

遠足なら、

「水筒」
「ハンカチ」
「お弁当」

など本人に書き出してもらい、一つずつチェックする。

こうした経験は、中高生になって手帳や予定管理アプリを使う練習にもつながります。

この「自分で考える」ための土台を作っておくことが小学生時期の目標です

中高生:親が管理するより、自分で仕組みを作らせる

思春期になると、

「片付けなさい」

「勉強しなさい」

と言われるほど反発したくなることもあります。

この年代では、親が一方的に管理するより、

「どうすれば忘れないと思う?」

「試験前の2週間をどう使う?」

「部屋のどこが使いにくい?」

と本人に考えてもらう方が、自立につながります。

スマートフォンのカレンダー、ToDoアプリ、タイマーなどを使うのも一つの方法です。

うまくいかなければ、

「この方法では無理だったから、次はどうしようか」

と一緒に修正します。

自己管理とは、最初から完璧に予定を守れることではありません。失敗したときに、自分に合う仕組みへ修正していく力も自己管理の一部なのです。

片付けだけでなく、年齢に応じた家事をお願いするのもよいでしょう。

幼児なら、

  • 箸を並べる
  • テーブルを拭く
  • 洗濯物を運ぶ

小学生なら、

  • お風呂掃除
  • 食器を片付ける
  • 洗濯物をたたむ

中高生なら、

  • 食事を作る
  • ゴミ出し
  • 買い物
  • 家族共用スペースの掃除

などが考えられます。

AACAPでも、年齢や能力に合った家事は、時間管理や整理、家族の中で責任を担う経験、自立した生活の準備になると説明されています。

ここで意識したいのは、

「親を手伝わせる」のではなく「家族みんなで生活を維持している」

という考え方です。

「やって当然」

ではなく、

「ありがとう、助かった」

と言葉にする。

これだけでも、家事が単なる命令ではなく「自分も家族の役に立っている」という経験になりやすくなります。

性別によって役割を固定する必要もありません。

料理、洗濯、掃除、ゴミ出しなど、将来の生活に必要になることを幅広く経験できれば十分です。

家庭での「責任」を果たすことができると、社会生活でも役割を担いやすくなります。

幼児や小学生なら、シールやスタンプなどを使い、一定量溜まったらご褒美をあげる方法(トークンエコノミー法)もあります。

ただし、ご褒美は永久に続ける必要はありません。

最初は、

「片付けられたらシール」

とご褒美だったものを、

「自分でできたね」

「助かったよ」

という達成感や感謝へ少しずつ移していけばよいでしょう。

ごほうびを使わなくても習慣化できているなら、もちろん導入する必要はありません。

AACAPも、具体的な目標を設定したスター表や報酬システムを選択肢として挙げています。

片付けが苦手なだけで発達障害とは限らない

「片付けられない」=「ADHDなのでは?」

と心配になる保護者もいるかもしれません。

確かに、注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)では、物を頻繁になくす、整理が苦手、忘れ物が多いといった特徴がみられることがあります。

しかし、片付けが苦手という一つの特徴だけでADHDと判断することはできません。

ADHDの診断では、複数の症状が長期間みられ、家庭だけでなく学校など複数の場面で認められること、さらに学習・家庭生活・友人関係などに明らかな支障が生じているかを総合的に確認します。

睡眠不足、不安や抑うつ、学習上の困難などによって似た状態になることもあります。

生活全体に困りごとがある場合は相談を

例えば、

  • 忘れ物や紛失が非常に多い
  • 学校でも家でも指示を最後まで実行するのが難しい
  • 時間管理が極端に難しい
  • 宿題や身支度など日常生活全般で困っている
  • 本人自身がかなり困っている
  • 家族の工夫だけでは生活上の支障が続く

といった場合には、片付けだけの問題として考えず、学校の先生や小児科、児童精神科などへ相談することも選択肢です。

大切なのは、診断名を探すことよりも、

「本人がどこで困っているのか」「どうすれば生活しやすくなるのか」

を考えることです。

ADHDなどの診断に至らなくとも、生活のヒントなどが得られる場合があります。

片付けを教えていると、どうしても目の前の散らかった部屋に目が向きます。

しかし、最終的な目標は、

「おもちゃが一つも床にない状態」

ではありません。

自分で、

「そろそろ片付けよう」

「明日の準備をしておこう」

「忘れないようメモしておこう」

と考え、必要なら道具や周囲の力も借りながら生活を整えていく力を身につけることです。

その力は一朝一夕には身につきません。

何度言っても忘れる日もあります。

親が手伝う日もあります。

昨日できたのに今日はできない、ということも子どもにはよくあります。

ですから、「何歳になったら全部一人でできるの?」と悩む必要はありません。

その子の発達段階に合わせて、

一緒にやる → 見守る → 自分でやる

と少しずつ親のサポートを減らしていけばよいと思います。

周囲の子どもや兄弟姉妹と比べる必要はありません。「その子のペース」を親が把握して、それに見合った対応をしていくことが大切です。

さて、最初の問いに戻りますが、

子どもが片付けてくれないとき、

「どうしてこんな簡単なことができないんだろう」

と思ってしまうことがあります。

そんなときは、少しだけ視点を変えてみてください。

「片付けて」という仕事が、この子にはまだ少し難しすぎないか。

収納方法が整っていないことも原因じゃないか。

遊びを突然中断させていないか。

何をすればよいのか具体的に伝えられているか。

まずは一つだけ、

「ブロックをこの箱に入れよう」

くらいから始めてみるのがおすすめです。

繰り返しになりますが、片付けの目的は、親の理想通りの部屋を作ることではありません。

子ども自身が将来、自分に合った方法で生活を整えられるようになることです。

家庭によって生活リズムも収納方法も、子どもの得意・不得意も違います。

完璧な方法を探すより、家庭とその子に合った仕組みを少しずつ試してみてください。

「放置」も「過保護」も子どものためにはなりません。「親が全部決める」のではなく、「一緒に考える」「親が行動で示す」ところから心がけていきたいですね。

参考文献・情報源

  • 文部科学省「小学校学習指導要領解説 家庭編」
  • American Academy of Child and Adolescent Psychiatry(AACAP)「Chores and Children」
  • Centers for Disease Control and Prevention(CDC)Developmental Milestones / ADHD
  • White EM, et al. Associations Between Household Chores and Childhood Self-Competency. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics. 2019.
  • Tepper DL, Howell TJ, Bennett PC. Executive functions and household chores: Does engagement in chores predict children’s cognition? Australian Occupational Therapy Journal. 2022.
  • Harvard Health Publishing「How to get your child to put away toys」

※家事参加と発達に関する研究には観察研究も多く、因果関係が確立しているわけではありません。研究結果は「家事をさせれば能力が向上する」という意味ではなく、関連を示したものとして解釈してください。

シェアお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Dr.流星 – 精神神経学会専門医。精神保健指定医。
現役の精神科医であり、父親として日々子育てに奮闘中。
日々子育てに関連のある医学論文を読み、「科学的根拠に基づいた育児」をテーマに、子どもの心と脳の発達、メンタルケアについて情報を発信しています。現役パパだからわかる子どもの発達に関するリアルな悩みに寄り添いながら、家庭で実践できるヒントも紹介。ガジェット好きでもあり、育児に役立つ家電や子育てグッズを色々と試しています。子育ての悩みを軽減し、家族のメンタルヘルスを良好に保つ…そんな子育てに役立つ知識をお届けしていきます。

目次